免疫抑制薬

メモ:
慢性糸球体腎炎の発症と進展に種々の免疫異常が関与していることは周知である。従ってその治療に免疫抑制薬が使用されるのは当然のことである。腎炎の治療にはステロイド剤が最もよく使われ、治療効果もすぐれていると考えられるが、ステロイド剤抵抗性ないしはステロイド剤を使いたくない症例も数多く存在する。このような場合に免疫抑制薬が使用されることになる。
免疫系にはTリンパ球とBリンパ球とが大きく関係している。免疫抑制薬もそれぞれが特徴的な作用機序を持っており、これによって2つに大別される。サイクロフォスファマイド、アザチオプリンに代表される薬剤は主にB細胞に作用しその抑制効果を発揮する。一方、サイクロスポリンAやタクロリムス(腎炎にはまだ使われていない)は主にT細胞機能を抑制(IL-2産生を抑制)する。
免疫抑制薬を使用する際には、副作用に注意が必要である。サイクロフォスファマイドは骨髄抑制に伴う易感染性はもとより、無用に長期投与すると性腺機能不全が問題になってくる。したがってサイクロフォスファマイドの場合150mg/体重1kg を投与量の一応の目安としている。すなわち、体重50kgの患者であれば1日50mgで約150 日となるので、約半年間の投与が可能という訳である。そのほか、晩期の副作用として悪性腫瘍の併発や、催奇形性が問題となる。サイクロスポリンAは腎障害、細動脈障害、高血圧などが、副作用として問題となっている。そのため血中濃度のモニターが必要である。このような副作用を防ぐためにはtrough level50〜100 ng/ml (全血)を保つのがよいといわれている。
最近、サイクロフォスファマイドの点滴静注療法(いわゆるパルス療法)が、ループス腎炎のみならず原発性糸球体腎炎にも試みられている。当科のこれまでの経験では、大した副作用もなく有効な治療法のようである。
免疫抑制薬を腎炎に使用する場合、副作用以外に注意しなければならない点は、サイクロスポリンA、ミゾリビン以外は保険診療では使用が認められていないことである。サイクロフォスファマイドやアザチオプリンを用いる場合は、これらの点について患者に十分了解してもらう必要がある。また、サイクロスポリンA、ミゾリビンは非常に高価な薬剤であることも忘れてはならない。
当科での、上記免疫抑制薬の印象は、サイクロフォスファマイドは確かに切れ味は良いが副作用も強いようである。10〜20%程度の症例に白血球減少が見られるが、重篤なものではない。性腺機能抑制は女性よりも男性に強いといわれている。女性では月経不順で気づくこともあるが、男性では注意が必要である。アザチオプリンは切れ味の点ではサイクロフォスファマイドにおよばないが、安全に長期間使用できる薬剤と思われる。妊娠についても、今のところ問題はないようである。アザチオプリンで問題になるのは、とりあえずは肝障害であろう。サイクロスポリンAは、保険で認められている用量では、まず危険な血中濃度になることはない。小児期のネフローゼ症候群にはきわめて有効だが、成人では相当症例を選ぶようである。ミゾリビンは副作用は少ないが、長期間の使用によって初めて効果がでる薬剤のような気がする。小児科領域では、サイクロスポリンAの腎毒性が問題になっており、効果が期待される薬剤になっている。これらの薬剤にはまだ多くの副作用がある。使用の際は確認のこと。


1)ステロイド抵抗性腎炎に対し
エンドキサン(サイクロフォスファマイド) 50mg 1×(約半年間)

あるいは、
イムラン(アザチオプリン) 50mg 1×(約1年間)
ブレディニン(ミゾリビン)  150mg 3×(長期使用可能)
2)特にステロイド抵抗性あるいは頻回再発性微少変化群に
サンディミュン(サイクロスポリンA) 3mg/kg/day
注1.いつまで続けるかについては結論がでていない
注2.減量にともなって再発する例もある。
3)エンドキサン(サイクロフォスファマイド) 500mg/2週
注1.500mlの輸液製剤に溶いて2時間程度で点滴静注する
注2.とりあえず半年行い、効果があれば投与間隔をあけて続ける